「顎関節症」と「かみ合わせから引き起こされる病気」は同義ではありません。
顎関節学会ではこのように解釈されています。
私も個人的にはこの考えを支持します。
基本的に正しいのですが、例外はあります。
先月来院された顎関節症の患者さん。
顎が痛いと来院されました。
診断は顎関節症Ⅰ型。すなわち咀嚼筋障害を主徴候としたもの。
左側の顎関節疼痛。肩こり、耳鳴り、頭痛など不定愁訴がありました。
咬合診査をしたところ、右側が全く咬合していません。インプラントも入っていましたが、上下の歯は目で見ても隙間がありました。
右に即席の仮歯をつくり、左右均等に噛めるようにしました。
次回の来院時には、長年の頭痛、肩こり、耳鳴りが嘘のように消失しました。
かみ合わせの左右のバランスが極端に悪いと顎関節に負担をかけるのは当然のことです。
しかし、前医での治療において、かみ合わせを無視して作ったのでしょうか?
おそらく、その時は顎関節の状態、筋の緊張状態などの要因で、その位置で噛んでいたのだと思います。
顎関節症の難症例ではそのようなことが起こりえます。
慎重に経過を観察しながら仮歯から、最終の歯に移行する必要があるのです。
「症状が良くなった」と手放しで喜ぶのは早いと思っています。