カテゴリ: 歯内療法

根管治療に使用する薬剤について

葛飾区金町の歯科医院 尾澤歯科医院院長の野村です

「根管治療に使用する薬剤について」

当院では根管治療(歯の根の治療)を重視しておこなっています。

きれいなかぶせものを装着しても、その土台となる歯根が重要であるのは言うまでもありません。

さて、他院にて根管治療をおこなった際、術後に薬の匂いがしてきたという方がいました。

おそらく現代の根管治療において使用されなくなっているFC(ホルマリンクレゾール)等の揮発性根管貼薬材の匂いだと考えられます。昔の歯科医院の匂いです。さらに、貼薬材の上につめる仮封材がストッピング等の封鎖性に劣る材料を使用している場合は薬液が漏れる可能性が高いです。

現在はどのような薬剤を使用するでしょうか?

洗浄を目的とした薬液はNaOCL(次亜塩素酸ナトリウム)とEDTAが主となります。

塩素にて微生物を構成する細胞膜、細胞壁を壊し、タンパク質等を溶解します。

EDTAにてスメア層などの無機質を溶解します。

これらを超音波を併用し効果的に洗浄を行います。

洗浄した後につめる薬は?

貼薬といいますが、Ca(OH)2 (水酸化カルシウム)が主となります。

白色無臭の粉末です。生理食塩水等に溶かしてペースト状にして使用します。

強アルカリ(pH12.5)にて理論上は細菌を死滅させます。

貼薬した根管は、水硬性セメント等で封鎖します。

例外はありますが、現在一般的に行われている歯内療法専門医の手順になります。

正しい診査診断、現代のエビデンスに沿った治療方法。とても大切です。

 

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根管治療が困難なケース

東京都葛飾区金町 尾澤歯科医院院長の野村です。

根管治療は難しい場合があります。

血管は単純な形態をしておらず、細かく分岐をして走行しています。

歯の中を通っている管(根管)は血管や神経で構成されています。

血管が複雑な分岐をしているように、根管も複雑に分岐をしている場合が多くあります。

こちらの写真は教科書からの引用です。

単純な形態をしていないのが分かると思います。

従来の方法はこの複雑なものを肉眼で治療していました。

当然ながら成功率は低いと言わざるを得ません。

再根管治療の成功率は文献的には低いのですが、

当院での再根管治療の成功率は高いです。

その理由は、精密根管治療にあります。

歯科用顕微鏡(マイクロスコープ)を用いた精密根管治療です。

当院ではドイツのライカ製の顕微鏡を使用しています。

顕微鏡にて高倍率での治療、根管用超音波器具を併用することで、肉眼では見えない汚れをきれい取り除くことが可能になりました。

精密根管治療は治療時間が長くなります。

従って、保険治療にて行うのには限界があります。

基本的に自費治療とさせていただいております。

根管治療の成功なくして、補綴治療(かぶせものの治療)の成功はありません。

土台からじっくりと取り組むことが、長期安定の秘訣です。

 

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マイクロスコープの有用性

東京都葛飾区金町 尾澤歯科医院 院長の野村です

「マイクロスコープの有用性」について

マイクロスコープとは顕微鏡のことです。

歯科治療はとても細かな作業が多く、肉眼で確認することには限界があります。

たとえば根管治療。虫歯が進行し「神経をとりましょう」というのが根管治療です。

歯の内部には栄養血管、神経があります。

虫歯で細菌感染すると根の内部を掃除する必要がでてきます。

神経の管はとても細く、肉眼で見えないことがあります。

また、根管内部をきれいに掃除出来たかどうか、肉眼では確認が不可能です。

マイクロスコープを用いた根管治療の成功率は、肉眼治療に比べて有意に上がります。

ルーペも普段の治療では多様しています。

しかし根管治療となると、マイクロスコープ無しでは難しいです。

治療は道具ではなく、技術であると確信しています。

しかし、技術+道具により相乗効果が得られるので、どちらも必要だと思っております。

尾澤歯科医院では、ライカ製のマイクロスコープを用いて精密根管治療をおこなっています。

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MTA治療について

東京都葛飾区金町 尾澤歯科医院院長の野村です。

MTA (Mineral Trioxide Aggregate)はセメントの一種です。

ケイ酸カルシウムを主体とした無機セメントです。

高い生体親和性が特徴です。

どのような治療に有効かというと、

う蝕が進行し歯髄まで達している場合、抜髄といい神経を取り除く治療が一般的です。しかし歯髄はできるだけ温存させたい。

MTA治療では、感染歯髄を取り除き、健全な神経を残します。そこに生体親和性の高いMTAセメントを貼付しコンポジットレジン修復等の治療をおこないます(直接覆髄、生活歯髄切断法など)。

他には逆根管充填の際に使用します。

根尖に病巣があるときに外科的に病巣を感染している歯根の尖端ごと取り除く方法があります(歯根尖切除法)。根尖から約3mm程度の歯根を切断し、更に切断面の根管から材料を埋める方法を逆根管充填といいます。

今まで逆根管充填に使用していたsuper EBAセメントは細胞毒性があるため成功率が少し低かったのですが、MTAセメントを使用することにより成功率が上がります。

パーフォレーションリペアにも有効です。

根管内と歯根の表面が交通してしまった状態。治療の結果の偶発症になります。放置しておくと感染し抜歯をせざるを得なくなります。

MTAセメント充填することで抜歯を回避することが可能になります。

尾澤歯科医院にて使用しているMTAセメントはProRoot MTA(デンツプライシロナ)、MTAアンジェラスHP(ヨシダ)になります。治療内容により使い分けています。

MTAセメントは大変優れた歯科材料ですが、健康保険の適応外です。

尾澤歯科医院ではマイクロスコープを用いた精密な治療と、優れた生体親和性を有するMTAセメント治療を組み合わせています。

治療費用はMTA治療代として5万円/本(税別)になります。

歯を出来るだけ保存するために、様々な症例に対応していきます。

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歯周病のためのうがい薬

東京都葛飾区金町 尾澤歯科医院 院長の野村です。

尾澤歯科医院でお勧めしている歯周病のためのうがい薬を紹介します。

ライオンの「システマSPT」と、アース製薬の「モンダミンプロケア」です。

いずれも歯科医院のみの扱いとなります。

歯周病を予防するためにはセルフケアが重要です。

尾澤歯科医院においては、歯科衛生士による指導を徹底しています。

しかし、セルフケアには個人差があります。

口腔内の状況も歯並びや、歯周炎の進行状況、細菌の種類や数など個体差が大きいのが現状です。

少しでもセルフケアの補助となるのであれば、このようなうがい薬を使用してみるのも良いと思っています。

特徴的な成分ですが、

1.CPC(塩化セチルピリニジウム)

口腔内の原因菌を殺菌します。

2.GK2(グリチルリチン酸ジカリウム)

抗炎症作用があり、歯ぐきの腫れや炎症を防ぎます。

3.TXA(トラネキサム酸)(モンダミン プロケアに含有)

出欠予防成分のTXAにより歯ぐきからの出血を防ぎます。

特にCPCは歯周病の原因菌である1P.gingivaris や A.actinomycetemcomitans の殺菌効果が認められていますので歯周病の方や予防にお勧めです。

モンダミンプロケアは希釈する必要がなく簡単にご利用いただけます。ボトルが大きいため、持って帰る時に重たいのが欠点でしょうか。味もノンアルコールでマイルドなため使いやすいと思います。歯科医院専売ですので、取扱している歯科医院にてお求め下さい。

 

 

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クラック トゥース シンドローム

葛飾区金町 尾澤歯科医院院長の野村です

The Cracked Tooth Syndromeのお話です。

歯の不完全破折の結果としておこる症状の総称です。

歯にひびが入って咬むと痛かったり温度変化に過敏になったり、

マイルドな刺激(甘いものや酸性の食べ物)による知覚過敏を臨床症状として認めます。

Leica Picture

この歯の横方向に赤い線を認めます。

歯髄反応が無い(歯髄が壊死している)ため、根管治療をしようとして歯を削合していたところ、破折に気がつきました。

赤く染色してみたところ、はっきりとした線が認められ、クラックによる感染が原因で歯髄(歯の神経)が壊死したと診断しました。

通常はこのようなクラックを肉眼で確認することは困難です。

マイクロスコープによる確認作業で発見されることが多くあります。

レントゲンはほとんど有効ではありませんので、見落としやすい疾患です。

早期発見により歯を残すことが出来ます。

しかし放置すると破折が広がり、細菌感染により抜歯を選択しなければなりません。

大学での教育で、このような診断名を教わらないために、わからずに放置されることが多いようです。

早期発見、早期治療が大事です。

 

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根管治療を続ける?終了する?

葛飾区金町 尾澤歯科医院院長の野村です

「他医院で根管治療を半年も続けているが、膿が止まらない。咬むと痛い。」

このような悩みで来院された場合、

当院では根管形成(根管内をきれいにした状態)が終了した段階で、

根管充填(根管内を樹脂のようなもので埋めること)をし、根管治療を終了とします。

とお答えしています。

要するに、最適な治療を施したら、それ以上時間をかけて治療をしても治らない可能性が高いということ。

治療の効果がない場合はどのようにするか?

1.抜歯

2.外科的根管治療

外科的に根尖部を切断し、その切断面から逆根管充填を行います。マイクロスコープを用いることで、かなり成功率が上がりました。

また、逆根充に生体親和性の高いMTAセメントを使用することで、さらに成功率が上がりました。

健康保険において、外科的根管治療は前歯のみが適応です。

しかし、保険外にて臼歯部も可能です。

今まで抜歯を選択していた症例も治療は可能です。

抜歯は最後の手段ですので、外科的に治療をお勧めすることがあります。

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歯を抜くか 歯を残して治療するか?

葛飾区金町 尾澤歯科医院院長の野村です。

出来るだけご自身の歯を多く残す事を最優先としています。

しかし、治療の限界がありますので、残すことで健康を害してしまう場合は抜歯することをお勧めしています。

それでも残してほしいという訴えがある場合。

これは治療とは言えません。

説明してもわかっていただけない場合はそのまま放置します。治療はしません。

我々には歯を残す基準があります。

・残すことで何らかのメリットがある場合。

・かぶせ物やつめものにより、きちんと咬むことができること。

・かぶせ物をした場合、壊れたりせず、永くもつ見込みがあること。

これらをすべて満たさない場合は抜歯をお勧めしています。

歯がむし歯でボロボロの場合、

むし歯を除去したら歯の根っこ(歯根)しか残らない場合があります。

マイクロスコープにより根管治療を精密におこなうことで、歯の根っこは残せたとします。

このような場合、残念ながら頑丈なかぶせ物は不可能です。

歯根に支柱を立ててからかぶせ物をしますが、

咬合力などの大きな力が加わると、歯根が破折してしまうことがよくあります。

歯の根元から歯質が最低2mmあると強度的には大丈夫と言われています。

歯根は残せても、抜歯したほうが良い場合もあるわけです。

残っている歯の本数や、その歯がどれくらいの負荷を受けるかによっても違ってきますので、

総合的な判断が必要になってきます。

 

 

 

 

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歯根破折その2

葛飾区金町 尾澤歯科医院院長の野村です

歯内療法の診断は、様々な角度より診査をし、総合的に診断をします。

通常のレントゲン写真は重要な診査の1つであるが、これだけでは診断は不可能です。

総合的に診査をしても不明なため、診断の為に切開をする場合があります。

その1例です。

根尖部より排膿を繰り返しているが、原因が分からないため切開をしました。

Leica Picture

マイクロスコープにて撮影しています。

この症例では、大きな嚢胞を形成していましたが、その原因として歯根破折が挙げられます。

根尖から根管充填材が露出しています。これも感染源となっています。

長年にわたる炎症によるものでしょうか?歯根の異常な肥大を認めます。

分割してようやく抜歯をしました。

治療をすることは、その字の如く治す事です。

しかし、残念ながら治そうと試みても出来ないこともあるのが現実なのです。

治療をしようとしていたのに、結果的に抜歯となることもあります。

正しい診断をするために、日々精進していきます。

 

 

 

 

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歯根破折について

葛飾区金町 尾澤歯科医院院長の野村です。

歯根破折とは、歯軸に対して垂直方向に破折する場合と、水平方向に入る場合があります。

原因は外傷が多いです。

外傷と言っても、交通事故や転倒だけでなく、異常咬合によるものも含まれています。

当院で見られる歯根破折は、根管治療が施行されていて、大きなメタルコア治療がなされている症例がほとんどです。

特に、健康保険の長くて太いメタルコアが入っている場合は要注意と言えます。

健康保険の治療を否定しているわけではありませんが、

その多くが、銀(Ag)のコア(土台)を使用します。

銀のコアはセメントで接着しますが、銀が酸化するために接着力が低下します。

そこに外力(咬合力)が加わることにより歯根に応力がかかり、歯根破折を招くと考えられます。

しかし、必ずしも、コアが悪いわけではありません。

コアをつける前に、どのくらい歯質が残存しているかが重要だからです。

むし歯が進行しすぎて、歯がほとんど残っていなければ、歯根破折のリスクは大きいものになります。

Leica Picture

この写真では、ミラーを使用しているため、わかりにくいのですが、縦に歯根破折を認めました。

レントゲン写真では歯根破折は分からないことが多く、この症例は、歯根端切除手術を試みようとしたら歯根破折を認めたため、抜歯となったケースです。

肉眼では分かりにくい状態でも、マイクロスコープを用いることで、瞬時に診断が可能です。

根管治療後の歯根破折を防ぐために当院で気をつけている事。

・根管治療に際し、歯質を出来るだけ保存すること。

・歯質が十分に残存している場合は、コアを歯質の負担にならない材質を選択すること。

・メタルコアにする際はその長径、幅径を考慮すること。

・接着に際し、長期安定性の高い材料を選択し、その使用方法に注意すること。

苦労して治療した歯が破折するのは大変悲しいものです。

永く使用していただくために、日々努力して行きます。

 

投稿日: by nomura